状態:NGC-MS63(UNC/未使用)
30年戦争(1618-1648年)のさなか、1643年にドイツのアウグスブルグで発行された1ターレル銀貨です。オモテは神聖ローマ皇帝フェルディナンド3世(在位1637年-1657年)で、ハプスブルグ家の特徴がよく出た横顔です。ウラはアウグスブルグの都市景観で、中央には同市のシンボル松ぼっくりが大きく描かれています。本貨が発行されたのは1643年ですが、ご覧のようにウラに刻印された年号は、1642の上に1643が打たれています(1643/2年)。
この銘柄は1639年から1645年までの6年間にわたって発行されましたが、市場ではこの1643/2年や1643年の出現頻度はやや低く、1641年と1642年銘はやや高い頻度で出てきます。この銘柄は都市景観コインの中では比較的多く残っているほうですが、都市景観コインの人気化に伴って、ここのところこの銘柄もジワジワ値を上げています。
さてこのコインについてです。
オモテ/ウラとも長い年月を経た自然な銀色がきれいに残っています。この銘柄は黒色化した個体が多いですが、本貨のように明るい銀色は珍しく、摩耗や変色、コスレなどもほとんど見られず素晴らしい状態です。特にオモテのフィールド部分は均一に広がる艶消し状の輝きで、手が加わった痕跡も見られません。ウラの輝きもきれいで、オモテ同様落ち着いた輝きですが、あえて一つ欠点を挙げるなら、ウラの9時の位置から松ぼっくりに向かって走るごく細いスクラッチです。パッと見ではわかりませんが、ルーペで拡大すると見えます、拡大写真は8番目の写真でご確認ください。このスクラッチを踏まえてもMS63にしては良い状態だと思います。
なおオモテの肖像の目じりに縦2ミリほどの隆起部分が見えますが、これは極印側にできたキズによるもので欠点ではありません、1642年以降に発行された本銘柄のすべて見られる特徴です。
この時代のコインは大きなカッターで一枚一枚カットして作っていたこともあり、形がイビツなものがありますが、ご覧のように本貨はセンターに打たれていますし、ほぼ真円です。その点でも大変良いコインだと思います。
なおNGC社の鑑定分布を見ますと、本貨1643/2(2のうえに3が刻印されている)は4枚しか鑑定されていらず、本貨MS63は単独の最高鑑定です。1643と1643/2を合わせても、総鑑定数21枚のうち上位4枚に入る高鑑定です。21枚の内訳は以下の通りです。
MS63+:1枚
MS63:3枚 ←ココです(準最高鑑定)
MS62:4枚
MS61:3枚
AU58:6枚
AU55以下:11枚(7枚の数字なしDetails鑑定を含む)
冒頭で紹介させていただいたように、ほかの都市景観ターレルと同じく、この銘柄もここ数年でジワジワ値を上げています。2021年10月に国内で開かれたオークションでは、本銘柄1641年銘NGC-MS63が出品され、手数料込み84万円ほどで落札されています。近いところでは先週(2023年7月16日)の国内オークションで、1641年銘(NGC-MS64)が総支払額ベース90万円ほどで落札されています。
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