ユーゴスラビア1931年、アレキサンデル1世の4金貨ダカット「剣と鳥」KM-14.1

状態：PCGS-MS63 PL(UNC-)、プルーフライク

ユーゴスラビアで1931年に発行された4ダカット（ドュカタ）金貨です。

オモテ面は君主のアレキサンデル1世と王妃マリアです。第一次世界大戦がバルカン半島のサラエボから始まったように、当時のバルカン半島は政治的にも民族的にも複雑に入り組み混乱していました。本貨は第一次世界大戦終結後に形成された、ユーゴスラビア王国のアレキサンデル1世時代に発行されたものです。アレキサンデル1世は本貨が発行された3年後の1934年に、フランス外遊中マルセイユで暗殺されました。このコインは在位中（ユーゴスラビア王としては1929年から1934年在位）に発行された唯一の大型金貨です。

本銘柄は1931年から1933年の3年間発行されました。カウンターマークは二通りあり、一つは本銘柄「剣と鳥（KM-14.1）」で、もう一つは「トウモロコシ（KM-14.2）」です。発行枚数の内訳は不明ですが、市場の出現頻度を見ると「剣と鳥（KM-14.1）」のほうがやや多いようです。NGC社の鑑定枚数をみても同様で、「剣と鳥（KM-14.1）」が133枚に対し、本貨「トウモロコシ（KM-14.2）」は88枚です。クラウスのカタログ価格をみても「トウモロコシ（KM-14.2）」ミントのほうが少し高めの評価です。

なお両者を合わせてNGCによって221枚（注）が鑑定されていますが、うちプルーフライクは41枚のみです。

注）カウンターマークがない個体も3枚鑑定されています。

さてこのコインについてです。

ご覧のようにオモテ/ウラとも素晴らしい輝きで、PCGS社の鑑定どおりプルーフライクです。プルーフライクは、贈呈用に入念に作ったプルーフのように、美しい光沢感があるコインに与えられる加点とお考え下さい。またオモテ/ウラとも摩耗はほとんどありませんし、この銘柄にありがちなフィールド部分のバッグマーク（注）もわずかです。

注）バッグマーク：出来上がったコインを袋に入れて輸送する際、コイン同士が袋の中でぶつかり合ってできるキズです。大きな欠点ではありませんが、無いに越したことはありません。

なにぶんプルーフやプルーフライクのコインは写真撮影が難しく、過剰にヘアラインが写ったり、また逆に光源の位置によってはヘアラインが飛んでしまったりもします。そのようなことが極力無いように、特にオモテ面は複数の写真を載せました。なお4番目の写真はあえてヘアラインが目立つよう、横から光を当てて撮影しました。

また5番目の拡大写真のように、本貨のオモテ面4時のフチ近くに「剣と鳥」を描いたごく小さなカウンターマーク（刻印）がありますのでご確認ください。

ウラ面はハプスブルグ家の紋章「双頭の鷲」ですが、ご覧のように大変良い状態で、ヘアラインもほとんど見られません。

この銘柄は10,000枚造られており発行枚数は少ないですし、加えて希少なPL(プルーフライク)の状態です、おそらく初期の刻印で打たれたものでしょう。なおPCGS社による本銘柄PL鑑定の内訳は以下の通りです。

MS64：1枚
MS63：1枚←ココです（PLのうち準最高鑑定）
MS62：6枚
MS61：3枚

PCGS社の鑑定数は少なくあまり参考になりませんので、以下にNGC社の鑑定数も紹介しておきます。NGC社の鑑定分布によりますと、本銘柄（1931年の「剣と鳥」ミント）の総鑑定数は133枚、そのうちPLの鑑定は21枚のみです。

MS63：3枚←NGC社ならココです（PLのうち最高鑑定）
MS62：11枚
MS61：6枚
MS60：1枚
MS62：3枚

以上のように、本銘柄のPL鑑定は6枚に一枚ほどしかありません。さらに本貨MS63PLはPCGSの準最高鑑定、NGC社に当てはめるなら最高鑑定です。

この銘柄は発行されてから100年が近づいており、そろそろアンティークコインとしての価値が出始めています。発行数も少なくPLなので、今後期待ができるコインだと店主は思います。なお「ときいろ」では3年ほど前に、本銘柄1932年銘「トウモロコシ・ミント」NGC-MS63PLを87.6万円で販売しております。

第一次世界大戦（1919年ヴェルサイユ条約によって終結）によってヨーロッパは荒廃しましたが、このコインはヨーロッパで大型の金貨の発行が途絶えたこの時期に発行されました。本貨はその見栄えの立派さ（直径約38ミリ）の割には重量が少なく、金の含有量は0.44オンスほどしかありません。きっと十分な予算がないなか、民族の統一意識を作り上げようと国を挙げ発行されたのではないかと思います。そういう意味では感慨深い金貨ではないかと店主は思います。